受け口の原因は大別して2種類あります。一つは歯のかみ合わせだけが逆の場合で、歯列矯正だけで治ります。もう一つが骨格異常で顎形成手術と手術前後の歯列矯正が必要です。
手術は、歯列矯正医が紹介する大学病院などの口腔外科で受けるケースが多く年々増えています。
全身麻酔で口の中からメスを入れ、下あごの左右両側の根元の部分を一度切り離して後退させ、金属製の板やねじで固定します。上あごの後退が伴う場合には、上あごを前に引き出す手術も同時に行します。
板やねじは4ヵ月後~1年後、あらためて手術ではずします。
歯列矯正は学齢期に施術を受ける患者が多いですが、この手術は成長が止まってから受けます。
成長期には下あごなど「長管骨」とよばれる骨の両側の細胞が増殖し、成長に伴う変化が大きいからで、成長期に受け口が悪化するのもこのためです。
一般的には術後、骨折状態にあるあごを固定するため、上下の歯をワイヤーでしばる「顎間固定」をします。
口から食事が取れず会話も不自由で、入院期間は数週間に及ぶこともあります。
一方、鶴木院長は、チタン製のプレートやネジで骨を強力に接合する新たな手法を開発しました。
顎間固定は不要で、入院期間はわずか5日間です。
ただ、手術前の矯正で歯の傾斜を正しく整えると一時的に受け口が強まることがあります。
手術で解消されますが、治療を中断しようとする患者や家族もあり、「正しい治療の経過であることを理解してほしい」と言います。
正しいかみ合わせは、顔の審美的な効果だけでなく、健康上も欠かせません。
鶴木院長は、手術が必要なのに、10年以上近くの歯科医による歯列矯正が続けられ、思い余って転院してきた患者の例を挙げ「自分はどういう治療を受けるべきなのか、治療方法や時期については顎顔面矯正外科の専門医に相談してほしい」と話しています。